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「TPP」は農業を壊滅させるのか [その他]

日本は23日から環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に初参加するが、
関税撤廃に伴う影響が大きいとされるのが国内農業だ。
TPPは農業を壊滅させるのか。
それとも所得減や高齢化にあえぐ農家の現状を
変革させるきっかけとなるのか。

・鈴木宣弘氏 「ゼロ関税で輸出」は空論

-TPPに参加した場合、国内農業はどのような影響を受けるか

「TPPの出発点は『すべての関税を例外なしに撤廃』だ。
自民党が『死守する』と宣言したコメなど農産物の重要5分野の関税は、
過去の自由貿易交渉などで1度も撤廃したことがない。
『これだけは譲れない』と死守してきた日本の生命線だ。
米カリフォルニア米の生産コストは
60キロ当たり2千円程度だが、日本は1万円以上。
狭い国土の日本では土地を集約しても、
1区画で100ヘクタール規模の農地を持つ豪州には
到底歯が立たない。競争条件が違い過ぎる。
ゼロ関税で『輸出産業に』というのは机上の空論だ」

-自民党は重要5分野が守れない場合、脱退も辞さないと訴えている

「詐欺と言わざるを得ない。2月に安倍晋三首相とオバマ米大統領が
発表した日米共同声明では、冒頭から『TPPのアウトラインに基づき、
すべての品目を高いレベルで交渉する』とある。
TPPのアウトラインとは関税の全廃だ。
また4月に発表された日米の事前合意では、
交渉参加の『入場料』をしっかり支払わされた上、
食品の安全基準を含む非関税障壁などの積み残し分について
日米2国間の並行交渉で解決すると明文化された。
最初から並行協議で米に身ぐるみはがされることを
約束しているようなものだ。『交渉で聖域を取る』というが、
事後参加のカナダも屈辱的な交渉権の制約をのまされた。
交渉では日本に残された時間も権利も少ない。
国益の破綻はすでに明白だが、
実務的な交渉の途中での脱退など通常ありえない」

-農産品を「鎖国」で保護しても農業は衰退し続けたとの指摘がある

「意図的な情報操作で、実態は逆だ。日本の農産物の平均関税は
経済協力開発機構(OECD)の統計では11・7%。
欧州連合(EU)は20%程度あり、日本の関税は相当に低い。
その一方で、日本の農業所得に占める補助金の割合は、
私の試算で20%に満たない。欧州各国は9割を超えている。
米国も稲作経営農家の所得の6割は補助金だ。
先進国で一番保護を削減した農政ゆえに、
農家の所得は下がり高齢化が進んだのに、
さらにTPPに参加したら、農家の息の根を止めてしまう」

-では現状維持を求めるのか

「そうは言っていない。例えばコメの関税は現在778%だが、
こんなに要らない。関税をゼロにした場合、
補助金による海外品との差額補填に1兆数千億円程度必要だが、
200%にすれば4千億円程度で済む。
生産調整(減反)をやめて対策費を回せば、
消費者はある程度安いコメを食べることができ、
生産者の所得は確保される。
必要なのは『関税ゼロ』という極論のTPPでなく、
アジアに適した柔軟で互恵的な経済連携協定を
日本がリードして具体化すべきだ」

・山下一仁氏 困るのは農家でなく農協

-TPPに参加すべきか

「日本の今後の農業を考えればこそ、TPPには参加すべきだ。
例えば、コメの生産量は平成6年に約1200万トンあったが、
現在は800万トン程度しかなく、生産規模は縮小している。
将来どうなるか。日本は高齢化が進み、1人当たりの食べる量が減る。
加えて人口減少で全体の消費量も減る。
これに合わせて農業をやっていたら安楽死しかない。
それが嫌なら輸出しかない。輸出を増やすには、
相手国の関税を下げる交渉が必要だ」

-反対派は「関税が下がれば安い外国産米の流入で国内農業は壊滅する」と訴えている

「状況設定が間違っている。コメといっても
高級から低級まで品質の格差がある。
車でいえば、外車でも欧州製の1千万円台の高級車から
30万円台まであるでしょう。
日本米の品質に太刀打ちできるコメは世界中にない。
米カリフォルニア米は、食味計で測ると日本米とは歴然とした差がある。
価格差も、10年前は4倍程度開いていたが、
輸送コストなども踏まえれば、今は1・3倍程度。
中国米の価格も国内の物価上昇の影響で、日本米に近づいている。
さらに日本の生産調整(減反)をやめれば他国米と差はなくなる。
価格競争力を付ければ事態は変わる」

-減反廃止には抵抗が強い

「農協がTPPに反対している真の理由がそこだ。
減反廃止で米価が下がっても、政府が農家に
海外米との差額を直接補填すれば問題ないはずだ。
一方、農協はコメの価格で販売手数料収入が決まるので困る。
また兼業農家は高米価減反政策で戸数が維持されてきたが、
農協は彼らの収入をJAバンクなどの預金に吸収してきた。
今やJAバンクは預金額で日本第2位のメガバンクだ。
農業の大規模化には兼業農家が土地を手放す必要がある。
減反廃止はこの流れを加速させるが、農協にとって耐えられないだろう。
農協は農家数を武器に政治力を付けてきたので、
減反廃止には政治の覚悟も必要だ」

-狭い国土の日本は大規模化に限界があるとの指摘がある

「ウソだ。農業(農家)の1経営体当たりの規模は
日本が1とすれば欧州連合(EU)が9、米が100、豪州が1902とされる。
米は豪州の19分の1しかないが、世界最大の農産物輸出国だ。
土地の生産性の差を理解していない。
豪州はほとんど草地で、牛を放牧して安い牛肉を生産する。
米国はトウモロコシや大豆を生産している。
日本は高米価を維持するため、
1ヘクタール当たりの生産量をわざと上げない農政を続けた。
まだコスト減の余地はある」

-減反廃止の効果は

「現在60キロ当たり1万円程度かかる物材費が
4千円程度まで下がるとみている。タイ米と同じ水準だ。
コメ農家の所得は3倍以上に増える」

http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/130925/plt13092516380136-n1.html

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